2年前の10月16日、齋藤組が負けた。
グラウンドで崩れ落ちる先輩方、応援席で泣く万祐さん。
あの日の駒1で見た光景は昨日のことのように鮮明に覚えている。
当時、ボックスの端で試合に出るわけでもなく立ち尽くしていた自分の覚悟のなさ、無力感を呪った。
自分はその舞台に"立っていた"のではなく“立たせてもらっていた"のだと気がついた。
山﨑組の時もそうだった。
どんどんAの主力として活躍する同期の裏に隠れて、無難に何とかやり過ごす。
1試合たりとも自分の力を発揮できたことなんかなかった。
最後の法政戦もそう。
負けたら先輩を引退させてしまうという重圧の中、ラクロスを楽しめなかった。
弱い自分に勝てなかった。
そんな後悔を抱いたまま始まったラストシーズン。
自分は5枚目。
3年の時の慢心、冬オフを考えれば当然の結果であった。
Aで日本一になりたいと思う反面、Bにいる現実に焦る日々。
同期の活躍を素直に喜ぶ余裕なんてなかった。
六大戦も早慶戦も応援席。
FINAL4の明学戦の時も。
スタンドから同期を見ていると、いつも通りあの場に自分がいないこと、あの舞台でのプレッシャーを感じられないこと、悔しかった。
あのランシューが入った瞬間、悔しい気持ちとともに喪失感と後悔の念が押し寄せてきた。
もうAで日本一を目指すことはできないのだと現実を突きつけられた。
自分の弱さを痛感した。
そんな絶望の淵に立たされた時、ある言葉を思い出す。
「今、ここ、自分」
最近全く聞かなくなったが、先輩方の強たれに度々出てきた言葉だ。
「過去や未来ではなく『今』。そしてここにいる『自分』だけ。」
何をしても過去は変えられないし、戻ってこない。
なんか調子が良くて練習が楽しかった日も、
全部が上手くいかずにバッド入っちゃう日も、
練習後に朝定に駆け込む日も、
爆帰する日も、
そしてあの大井メインでのFINAL4の日でさえも、
もう二度と戻ってこない。
未来だって思い通りになることのほうが少ない。
どんなに緊張しても、恐怖に苛まれても、明日の慶應戦はやってくる。
思うようにOFがハマらないときもある。
連続失点するときもある。
FOでポゼッションがとれないときもあるかもしれない。
だからこそ「今、ここ、自分」。
『今』を全力で生きれば、強く、楽しく在れる。
『自分』に集中すれば、何をすべきか認識できる。
ミスしたら修正すればいい。
逆に得点したら気を引き締め直す。
過去は戻ってこないのだから。
味方のミスはカバーすればいい。
審判に文句があるときも過敏に反応しない。
集中するべきは自分なのだから。
そんなことを考えていると、残されたわずかな時間で死力を尽くして、最大限楽しもうと思えた。
もう弱き日の自分なんて気にならなくなっていた。
最後に、日頃の感謝を述べさせていただきたい。
まず、両親へ。
この4年間、金銭的も精神的にも支えてくれて感謝しかないです。
必ずや結果で恩返しをしたいと思います。
残り数試合しかないけど見ていてください。
次に同期へ。
4年間毎日のように顔を合わせくだらない話をしたりしてきたけど、この同期だから腐らずやってこれたのだと思います。
ありがとう。
明日の応援、楽しみにしています。
絶対に勝ちます。
そして、スタッフへ。
毎日テーピングを巻いてくれるTR、日々の練習を支えてくれているMG、試合の時に本当に頼りになるAS。
みんなのおかげでこのラクロス部の日常がまわっているのだと思います。
普段口にすることは少ないけど、感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとう。
最後に、コーチの方々へ。
ボブさん、丸田さん。
今年1年本当にお世話になりました。
必ず全学制覇して胴上げするので待っていてください。
嶋田さん。
ゴーリーのすべてを嶋田さんから教わりました。
ありがとうございます。
かっこいい姿をお見せしますので期待していてください。
最後に奥さん。
2年生の頃から本当にお世話になりました。
一年生コーチになられてからも顔を合わせるたびに激励の言葉をかけてくださり、自分を見ていてくれることに感謝を覚える反面、その期待に応えられなかったことへの不甲斐なさでいっぱいです。
最後、奥さんの望む形ではないかもしれませんが、精一杯プレーしますので見ていただけると幸いです。
さあ、明日は慶應戦。
勝ったら全国、負けたら引退。
早慶戦の借りもある。
負けるわけにはいかない。
支えてくれている、コーチの方々、選手、スタッフ、同期、そして応援してくれるすべての人の想いも背負って闘おう。
「今、ここ、自分」。
きつい瞬間にはこの言葉を思い出して、『今』、『ここ』に死力を尽くそう。
そしてこの狂った世界でしか味わえない最高の楽しさを勝ち取ろう。
みんなと最高の景色を見たいから。
勝つよ。
軌
G #72 日野元太