大学入学、4月1日。
日記を書き始めた。
真っ白なページを前に少し息を整えて、ひとつだけ決めて続けてみようと思った。
「明るい言葉しか書かないこと」。
いつか読み返したとき、4年間を温かく思い出せるように
けれど、言葉は正直だ。
ルールに締め付けられて、言葉が出てこなくて、何も書けない日もあった。
初めてラクロスのことを書いたのは、翌4月2日。
学生時代、
父と母を夢中にした「ラクロス」という競技を、
自分の目で見て感じたくて、
初めて西武新宿線に乗って東伏見へ向かった。
学生コーチについて行った先、小雨のグラウンドで見た先輩たちは、光をまとっているようだった。
その輝きに心を奪われ、気づけばもう入部届を出していた。
あの日から、
日記の内容は、
私が見る世界は、
ラクロスで埋め尽くされていった。
最初の夏までは、ただ毎日が楽しくて、
新しい人に出会って、新しく知ることばかりで、
夢中だった。そんな思い出が残っていた。
でも、7月末を最後に、日記は途切れた。同期MGが2人とも辞めてしまった
1年生の4月から7月まで、2人と過ごした短いけれどかけがえのない毎日が忘れられなくて、当時の私はただ孤独のみを感じ、私も辞めた方がいいのかなって毎日悩んでいた
愛子、麻生は当時から思いが真っ直ぐで、変わらないその存在にたくさん救われた。
4年間、ずっと隣にいてくれてありがとう。
今でもたまに、MG2人が辞めてない世界線を想像するけれど、
観客として美緒とあやめんに見守られながらフィールドに立つのもまた、それはそれでいいなって素直に思える。早く会いたいな、残り数試合どれか観に来てくれるかな
次に日記が残っていたのは9月6日、
サマー決勝の日。
ほとんどの試合が僅差、逆転。
決勝最後の笛が鳴って、
駆け寄る応援、同期やコーチ陣の眩しい笑顔
1人で立つボックスは、わからないことばかりだったけれど、めちゃくちゃ楽しかった。
ただ勝った瞬間が、喜び上がる同期たちの姿が、
忘れられなかった。
試合中、全員の矢印がひとつに揃う瞬間がある。
目標は同じだからこそ、あの一瞬、全員の想いが重なる。
私はその瞬間の虜になった。
このサマーの記憶は、それ以降の4年間を支える全ての原動力になった。
肌寒くなり、ウィンターが迫る頃、同期が2人増えた。
彼女たちの存在はまさに冬風のようで、
練習を、ただ過ぎるものだと考えていた当時の私の心に吹き込んできた。
積極的に学ぶ姿勢と、知るたびに輝かせる2人の目は、私を初心に連れ戻してくれた。
音舞と萌々子、入部してくれてありがとう。
4年生になって、
できると勝手に考えていた範囲を超えて、「無理をしたらできること」を続けてみようと思った。
そんな最後の1年間は、これまでの3年間以上に学ぶことが多かった。
自分1人ではできないことがたくさんあるから、せめて自分にできることは全部するようにした。
やるしかない、最高のスタッフスローガンだ。
無茶にも見える選択は、
部外の友人たち、私という人間自体を見てくれる人であればあるほど、
心配してくれるし、時に間違っているとも言われる。
そんなに大変なのになんで辞めないの?なんて何回言われたかわからない。
確かにそう、ほんまにそうなんやけど、今年は、渉外や広報、些細なことで言うと返信の速さとか、どこかの分野だけでも、無理をしてでも、自分が100%で臨めていると自信を持っていたかった。
そうでもしないと肩を並べられないぐらい、みんなが懸けている思いは強かった。
プレシーズンの頃に想像していた以上に、熱くて、直向きで、素敵なチームだった。
乗り慣れた西武新宿線が東伏見に着くのが怖い日もあった。このまま乗り続けたい、到着しなければいいのにって考える朝も多かった。
でも、
注目選手に選ばれた子が笑顔で次の練習の時に話しかけてきてくれることとか、
数字の羅列を見ただけで、誰の背番号か思い出す瞬間や、
フリーの時、ボールちょうだいって名前を呼ばれる瞬間が好きだったり、
1文字打つだけで、選手のフルネームが出てくる設定にしたりとか、
脚の形を見たら誰かすぐわかるようになったこと、
試合の日の朝、champion画像を作ってから家を出るのが好きだったこと
(ちなみに今シーズン372枚画像作った!ほめて!)、
大切な後輩スタッフたちが、どんな姿になるのか楽しみなこと。
他にも、
佳希のビデオ好きなんだよねっておがけんが言ってくれたのとか(1年次夏合宿、覚えてないやろなあ)、
早慶戦でりんたがグータッチしに来てくれたなとか、
育成で吉川くんが得点した瞬間とか、
先週のじが画像楽しみにしてるって言ってくれたこととか、
Bfinalの会場で大井取れた時にえんたくんがナイスって言ってくれたとか、
final4の試合後に岡地とハイタッチしたこととか、
松崎が敏腕MG増村さんって呼んでくれることとか、
最近さんしが心開いてきてくれてるなとか(知らんけど)、
焦っている時に、井原くんが「セットしよう!」って声かけてくれたこととか、
みっちゃんと宗次が頑張って作ったロスター褒めてくれたとか、
6on6で不安な時に、洸翔と颯良がナイスジャッジって言ってくれたとか、
凌平と匠がBグルのトークにリアクションしてくれたとか、
宗一郎の関西弁がちょっと上手くなってきたとか?
不仲な隼平から珍しく褒めてもらえたとか、
いろんな瞬間に、
このチームを好きだと思える。
そんな彼らが熱中するのがラクロスだから、
私はこれまで、日々を信じ続けられたのだと思う。
待ってくれた笛も、
聞きに来てくれたファールも、
世界一厳しくチェックしたクロスも。
全部が今のチームに繋がっていることを、
ボックスから、観客席から、実感した。
あの時の100%が、今の全力が、
全て試合に繋がっていることを知った。
「巧より強たれ」を読むと、誰もが時間をかけて4年間の想いを言葉にしていることに気づく。
みんなが言う通り、正直大変で、大切な毎日だ。
それでも、
仲間の支えが芯となっているから、
成し遂げたいことがあるから、
未来は私たちの手の中にあるから、
青春の時を1秒でも長く感じたいから、
まだ見ぬ景色を信じて第一歩を踏み出せる。
期待と歓声を背に、烈火の如く、熟慮断行で選んだ道を歩み続けられる。
想いを昇華させ、道を切り拓いていける。
「巧より強たれ」、野澤組にぴったりの言葉だ。
野澤組全チームのみんなが、心から大好きです。
運が重なって、タイミングが巡り合って、
この大学生活という限られた時間の中で、
あなたたちに出会えたことに、
心から感謝しています。
みんないつもありがとう。
あの日「明るい言葉しか書かない」と決めて始めた日記。
あのときは、そうしないと前を向けなかった。
でも変わった、
この部で過ごした毎日は、
この部で出会った人たちは、
自分を前進させてくれていることにやっと気づいた。
私は気づけるのが遅すぎたから、
まだラクロスで思い出を埋め尽くしたい。
まだ夢の続きを見ていたい。
明日は、どんな日記を書くんだろう。
一つになった矢印の
勝った先で、書き切れないほどの喜びで、ページを埋め尽くしたい。
VECTOR
MG 増村佳希

