まず初めに日頃より多大なるご支援と温かいご声援をいただき、男子ラクロス部を支えてくださっている保護者の皆様、OB・OGの皆様、そして部長・監督をはじめとする関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。
Aチームのリーグ戦期間という最高の舞台で、この「巧より強たれ」を綴れることに胸が高鳴っている。
私は昔から、この「巧より強たれ」を読むのが堪らなく好きだった。画面越しに、その人の濃密で泥臭い4年間を覗き見できる特別な感覚があったからだ。入部してからも過去のブログを片っ端から読み漁っては、宗一郎と感想戦を繰り広げた日々が鮮明に思い出される。
だからこそ、自分の番が来た今、綺麗事で終わらせる気はない。
いつか壁にぶつかり、立ち止まりそうになったまだ見ぬ後輩にとって、前を向くための聖書(バイブル)となることを願って、書こうと思う。
提出締切日の今日、東中野のワンルームでようやく重い腰を上げてPCを開いた。画面の光を見つめていると、怒涛の思い出が一気に押し寄せてくる。
振り返れば、ラクロスを始めた理由なんて大層なものではなかった。
大阪から上京し、東京には知り合いが一人もいなかった。大学に「新歓期間」なるものがあることすら知らず、受験の解放感に身を任せてポケモンとモンスターハンターに明け暮れていたら、気づいた時には新歓が終わっていた。
始まったばかりの大学生活で早くも「詰み」を覚悟したその時、1通のLINEが届く。
「ラクロス部の新歓いかへん?」
送り主は、小学生からの腐れ縁である永治だった。
藁にもすがる思いでその誘いに乗った。午前にグラウンドへ行って対面体験会に参加し、その日の午後には一人暮らしのために作ったばかりのピカピカのキャッシュカードを握りしめ、暗証番号を何度か打ち損じながら10万円の防具とクロスを買い揃えていた。
こうして、私のラクロス人生は拍子抜けするほどあっけなく始まった。
そんな勢いだけで飛び込んだ私だが、部内ではすっかり「ハズレ関西人」として定着し、謎の口癖「damn」の生みの親としても知られている。正直、自分がチームで最もバリューを発揮できるのは、ミーティングの時と、卓越したワードセンスで繰り出すジョークの瞬間くらいである。
実際、勉強でもスポーツでも昔からセンスの欠片もない人間だった。
高校受験は惨敗。8年間打ち込んだバスケですら、未だに左手のレイアップは怪しい。
そんな不格好で凡庸な私の4年間は、当然ながら決して華々しいものではなかった。
大半をBチームで過ごし、スタンドからAチームを応援する日々のほうが圧倒的に長い。3年の後半には、グラウンドで躍動し点を取る同期を見ても悔しさすら湧かず、「どうせ自分なんて」と自分自身に期待することを諦めていた。
そんな燻っていた私にも、忘れられない2つの転機がある。
1つ目は、あすなろ決勝の先制点。
攻めあぐねてストーリングが出された緊迫の局面、玲央の放ったまくりのこぼれ球を泥臭くすくい上げ、怒涛の4人抜きでねじ込んだ。ゴールネットが揺れた瞬間、嬉しさ以上に胸を打ったのは、狂喜乱舞して駆け寄ってくる仲間たちの顔だった。ボックスやスタンドが爆発したような熱気、スタッフ陣が抱き合って喜んでくれた一枚の写真は、今でも私の宝物だ。
2つ目は、今年のBチーム日体大戦。
1点ビハインド、負ければ引退がちらつく極限状態。残り7秒でボールを託され、がむしゃらに突進してお決まりのスイムでこじ開けた劇的な同点弾。あの瞬間もまた、スタンドから雪崩のように飛び出してきたみんなの歓声が、震えるほどの力をくれた。
この2つの景色が、私がラクロスを続ける理由を教えてくれた。
自分は、仲間の感情や期待という「他者の文脈」の中で生かされているのだと強く知った。自分が決めた1点が誰かの涙になり、誰かの明日への活力になる。その重みを知った時、もう腐っている暇なんて1秒もないと腹が決まった。
では、左手のレイアップすら怪しい凡人が、なぜ170人のうちの26人のボックスメンバーにギリギリ滑りこめたのだろうか。
理由はただ一つ、尖ったからだ。
豪快なシュートも、相手を置き去りにするスピードもない。綺麗な五角形のプレイヤーを目指すなんて端から無理だった。8年やったバスケで何者にもなれなかった自分が、たった4年のラクロスで万能になれるはずがない。
ならば、徹底的に尖るしかない。
クリース内での動き、初見殺しのブルダッジ、そして欺くパスフェイク。その3つだけを磨いた。
ビハインドシュートをバカにされたっていい。パスフェイクを笑われたって構わない。自分の好きと得意を信じ抜き、針のように一点を尖らせ続けた結果、その切っ先が自分を憧れの舞台へ連れてきてくれた。
ただ、ここで一つだけ勘違いしてほしくないことがある。
「尖る」とは、自分勝手に我が道を行くことでも、周囲を軽視することでもない。
グラウンドの上で誰よりも鋭く尖るためには、その土台となる「人としての器」が絶対にブレていてはならないと強く思う。
グラウンドに落ちている小さなゴミを拾うこと。
毎朝気持ちよく挨拶を交わすこと。
道具を揃え、4年倉庫をたまに掃除すること。
そんな地味なことがラクロスの勝敗に関係あるのか?と笑う人もいるかもしれない。しかし、誰も見ていないところで手を抜く人間が、試合終了間際の極限状態、たった1点の攻防で神様に味方されるはずがない。
「人事を尽くして天命を待つ」
この言葉の通り、勝負の神様は細部に宿る。自分がコントロールできるすべての日常、すべての振る舞いに誠実に気を配り、泥臭い凡事を徹底的に積み重ねる。そこまでやり切って初めて、天命を待つ資格が生まれる。人としての土台を実直に固めて初めての「尖り」だからこそ、土壇場でチームを救う本物の強さになると思う。
バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンはこう言っていた。
“You must expect great things of yourself before you can do them.”
(何かを成し遂げるためには、まず自分自身に期待しなければならない)
大半の時間をBチームで過ごし、諦めかけた私が最後に戻ってきたのも、この原点だった。
自分が自分を信じられなくなった瞬間に、成長は止まる。どれだけ現状が苦しくても、どれだけ泥水をすすることになっても、自分が自分の可能性にワクワクすることだけは絶対に手放してはならない。
だから、今BチームやCチームで足踏みしている後輩たちに伝えたい。
Aチームで活躍する姿が今は想像できなくても、焦る必要なんてない。かつての私が、まさにそうだったのだから。
人として当たり前のことを徹底的に積み重ねる。
そして、絶対に自分に期待することだけはやめない。
周囲に笑われたっていい。泥臭くて不格好でいい。
ナダルさんの言葉を借りるならば、「いい子ちゃんになろうとするな」
器用にまとまろうとするな。自分だけの武器を見つけ、誰よりも鋭く、尖れ。
ここからは恒例の感謝のコーナーに移ろうと思います。
コーチ陣へ
本当にお世話になりました。10-4を愛してやまない半場さんをはじめ、毎週末グラウンドに駆けつけてくださる嶋田さんや心平さん。丸田さんには3年間、プレーのみならず人としてという話を何度も聞きました。ナダルさんには自分のコンパスとなる「いい子ちゃんになるな」というお言葉をいただきました。そして1年生の時と合わせて計1年半指導してくださった優太さん。今年Aチームに招集された際、「もう帰ってくるなよ」という刑務所出所直後かのような熱いLINEをいただいたことは忘れられません。
家族へ
直接読まれるかは分かりませんが、きっと兄貴経由で届くと思っています。親のすねかじりを絵に描いたような息子で、本当に申し訳なく、そして感謝しています。高校時代、毎朝6時にお弁当を持たせて送り届けてくれた母。大黒柱として家族を支え続ける父の背中は、今でも私の憧れであり尊敬そのものです。そして兄貴は、いつだって私の人生のロードマップでした。体調には気をつけて頑張れ。
スタッフ陣へ
普段あまり話したことはないかもしれないけれど、心からリスペクトしています。トレーナーの手にかかれば身体の不自由は消え去り、マネージャーが置くパイロンは常に的確。渉外でも凌平とりんちゃんの凄まじい熱量のLINEラリーを見るたび、頭が下がる思いでした。ASが用意してくれるスカウティング素材は、グラウンドに立つ選手にとって何よりの武器になりました。
先輩方へ
柚貴さんに憧れてパスフェイクとダッジを必死に真似し、得点を決めればすぐにLINEをくださったはるまさん。そして、本当の兄貴分だったじょうさん。3年生の頃、Aに上がる時はいつも隣にいて、数え切れないほどのことを教えてもらいました。譲り受けたバンブルビーのグローブがグラウンドで輝くよう、最後まで戦い抜きます。
地曳へ
私のような凡人からすれば羨ましい本物のオールラウンダー。でかいクレイドルのショットで、どんどん点を決めてくれると信じています。
岸へ
生粋の点取り屋で、KTは岸が一番やりやすいです。去年の合宿で一緒にAでビクビクしていたのが懐かしい。
同期へ
AとBを行き来している身であり、人数があまりにも多すぎる上、書く人と書かない人の線引きが好きではないので割愛しますが、言いたいことや伝えたいことがたくさんあります。引退した後にみんなでお酒でも飲みながら語り合いましょう。
明日は中央戦。
決して楽なゲームにはならないだろうし、思わず下を向きたくなる瞬間もあるかもしれない。
でも大丈夫。
前を向けば、最高のオフェンスユニットがいる。
後ろを振り返れば、最強のディフェンスユニットがいる。
そしてスタンドを見上げれば、背中を押し続けてくれる最上の応援組がいる。
何も臆することはない。
好きなことを、好きなだけやってやろう。
相手を欺き、度肝を抜いて、徹底的に面食らわせてやろう。
いざ、強たれ。
MF #90 藤 佳諒

