よくこんな質問をされる。「早稲田は何で毎年強いの?」
その時はうまく答えられなかったが、4年間の早稲田ラクロスを、そして青木組の主将を経験して2つのはっきりとした答えを導き出せた。
せっかくの機会なので書いてみようと思う。
一つ目は「考える力」。
日常生活でもスポーツでも成功率を上げるためには「経験」に勝るものはないと思っている。
多くの挫折や経験を重ねて学んでいる人は何事も要領が良く質が高い。
だからラクロスに置き換えると、同じように練習していたら高校から始めている人が多い慶應には勝てないし、社会人にも絶対に勝てない。
当然、試合に勝つためには、多くの犠牲を払いながらラクロスに時間を割いてスキルを身につける必要がある。
ただ、うまいだけじゃ勝てないということを2年生時の関東ファイナルで経験した。
当時はわからないことばかりで「チームのお荷物ではないのか?」と思いながらも、このチャンスを逃したくない、自分がトップにいなければ同期に示しがつかないと思い、どんなに思い通りにいかなくても諦めずに努力を重ねた。
クロスに巻いたテーピングを赤く染めるまでシュートを打ち続けた日もあったし、次の日始発に乗って練習があるにもかかわらず泣きながら日が変わるまで練習をする日もあった。
唯一同期で共にAチームにいた中島と慰め合いながら、史上最強と呼ばれた秋山組の練習に必死についていった。
しかし今思うと、チームの結果よりも自分の事しか考えていなかったかもしれない。
練習試合は負け知らず、シーズン中旬にはファルコンズに大勝したチームが、開幕戦で圧勝した慶應に負けた。
意味が分からなかった。
ラクロスが怖いと感じた。
今でも2017年11月11日を忘れる日はない。
この日から、本当に勝つためには、何が足りなくて何が必要か、どのように努力してどんな練習をしてどんなイメージをもつか、を全員が本気で考える必要があることを教わった。
中途半端な気持ちや準備で試合に臨んだら勝てないことを学んだ。
そこまで貫かなければ日本一を獲ることができないことを知った。
早稲田ラクロスにはこんな言葉が受け継がれている。
「うまいチームが強いのではない。勝ったチームが強い。」
つまり強くなるために、そして勝つためには「考える力」が必要で大切であるということだ。
二つ目は「勝たなければいけない環境」。
結論を言うと「勝ちたい」という気持ちでは勝てないということ。
早稲田ラクロスには、先輩方によって築き上げられた「勝たなければいけない伝統」がある。
新人戦では優勝して当たり前といった雰囲気で、見えないものと常に戦っている。
皆言葉には出さないけれど、その感覚があるからこそチームが苦しい時や誰かが悩んでいる時、自然と一つになれる。
この「チーム力」は、青木組の最も大きな武器だと思う。
主将として臨んだ今年は、試合に対して勝ちたいという「欲」は一切なかった。
勝たなければいけないという「使命感」で1年間やってきた。
これが良いか悪いかはわからない。
普通じゃないと分かっている。
なんなら苦しかった。
なかには、最後くらい楽しめよと思う人もいるかもしれない。
ただその想いがあったから、どんなに暑くても寒くても雨でも、皆に厳しい要求を言い続け苦しい思いをさせながらハードな練習をした。
どんなに身体が痛くても肋骨を折っても、痛み止めを飲みまくって練習した。
どんなに去年と比べられても今年は無理だと言われても、諦めずに自分たちの力のなさと向き合った。
そうしなければ伝統を壊してしまうから。
そうでなければ重圧に押し潰されてしまうから。
そこまでやらなければ皆に努力に見合う想い出を創らせてあげることができないとわかっていたから。
正直、後藤組の結果の余韻に浸りながらレベルの差に愕然とし、諦めかけていた自分がいた。
先輩には本気で、一緒に引退したいとも伝えた。
良い思い出を創れたからもう終わりたいと思っていた。
ただ、どんなに環境が悪くても与えられた環境で黙々と努力を重ねる後輩の存在、
落ちこんでいる時や悩んでいる時に寄り添って正しい道を示し続けてくれるコーチ・先輩方の存在、
どんなプレーヤーのわがままも受け入れ、共に時間を捧げてくれているスタッフの存在、
素直で優しくて負けん気の強い、常にチームの事を考えて共に引っ張ってくれる同期の存在、
そして諦めかけていた自分を奮い立たせる伝統があったから、僕はここまで頑張れた。
今まで携わってくれた全ての人や見えない力のおかげで今の僕が、今の早稲田があると思う。
4年間を振り返ると、学生2連覇や代表活動など多くの素晴らしい経験をさせていただいた。
しかし、その裏には何度も失敗して挫折したし、部活をやめて将来確実に役に立ちそうなことをしようと本気で思ったこともある。
往復4時間もかけて注目を浴びないスポーツをして、何の成長が得られるのだろうかと強い疑問を抱いたこともある。
ただ、本気で向き合った者にしか、見ることのできない景色がある。
感じることのできない感動がある。
芽生えてくる感謝の気持ちがある。
そこに大学4年間をラクロス部に捧げている意義があるし答えがある。
上手い下手なんかは一切関係なく、目の前のことに全力で臨んでいることが、どこの誰よりもかっこいいし最高の思い出になる。
だから必死にもがいてほしい。
どんな逆境にぶつかってもここは我慢と思って再び這い上がってほしい。
そして、大学ラクロスでしか経験できないものを必ず見つけて自分の選択が正しかったと胸を張って言えるようになってほしい。
僕はラクロスに出会えて、RedBatsでプレーができて最高の4年間だった。
最後にあるコーチへの想いを綴りたいと思う。
その方とは2年生の時に出会い、何も武器がなくくすぶっていた自分を、1on1中心で頭の固いOFをしていた早稲田を激変させた。
その方はまさに僕の大学ラクロスそのものであり、師匠のように慕ってきた。
僕がこんなだからか今年のメンバーとは、今までで一番距離が近いし雰囲気が良い。
お決まりの動画も見たし、遠征先ではお風呂も一緒に入った。半場なんて人生まで考えてもらっていた。
そんな方との時間もあっという間で、明日が一緒に臨める最後の試合となってしまった。
悲しい気持ちもあるけれど、名言を楽しみに明日も変わらず元気な顔で会おうと思う。
皆で今日こんな事を誓った。
「成長した自分達の姿を披露し、その方が最高で最強であることを証明する。」
明日の試合は多くの方の気持ちを背負っている。
練習試合や関西遠征、リーグ戦から全学での九州と東北の試合を通じて全国の学生の情熱を肌で感じた。
さらに夏合宿でお世話になった遠野市の方々や遠征先では応援団まで結成していただいたOBの方々、朝早くから指導してくださるトレーナーの方々など、たくさんの方に支えていただいて青木組はここまできた。
記念試合なんかじゃない。
周りの目なんてどうでもいい。
142人で本気で勝ちに行く。
誰一人「自分たちは強い」と思ってないからこそ、明日の決戦まで努力を欠かさず最高の準備をしてきた。
そして、自分たちがラクロスを知った時から常に頂点を走り続けているFalconsと試合ができる最高の環境も整った。
難しいことをやろうとせずにやるべき事、やれる事を全うするだけ。自信もっていこうや。
結果で恩返しをする、伝統を引き継ぐ。
いや、全ての想いをのせて「伝説を作る」という使命を胸に江戸陸で戦う。
WAVE
AT #7 青木俊汰