「喉元過ぎれば熱さを忘れる」
自分はこんな諺がぴったり当てはまるような、弱い人間だ。
練習でうまくいかないもどかしさも、試合に出られない悔しさも、気づけば風化して、
何かと理由をつけては楽な方に逃げ、妥協し続ける。
その程度の覚悟しかない結果、これまでをBCチームで過ごしてきた。
その中で、要領の悪い自分にも熱心に指導してくださる先輩方や、いつかはAで活躍してやると意識高く取り組む同期の熱量に引っ張られるようにしてなんとか4年生にまでなった。
けれど、そんな自分だからこそ、下のチームで燻っている後輩たちの力になれるのではないかとBチームリーダーになった。
たかが数年早く生まれただけの同じ大学生が幹部としてチーム運営を行うこの組織では、先輩と上手に関われる選手が上に行きやすい。
それはある種仕方のないことなのかもしれない。
一方で、不器用で目立たなくても黙々と努力する選手もいる。
そんな小さくも力強い「波」を見逃さずに大きくする。
その上で、先輩方の届かなかった「Bリーグ全日優勝」を達成すると、決意した。
そう意気込んで新シーズンをスタートしたものの、練習試合では何度も大敗し、スーパーカップも散々な結果に終わった。
そんなチーム状況を打開できないまま練習も活気が失われていった。
Aからは練習相手にならないと言われたことさえあった。
何もうまくいかなかった。
どうすればいいかも分からなかった。
そうして切羽詰まった時、初めて周りを見渡して、気付いた。
勝手に自分で背負いこんで追い込まれていただけだということに。
余計なプライドを捨て、とにかく周りに頼り、自分の気持ちを素直に伝えるようになった。
誰も彼もが想定していた以上の熱意で応えてくれた。
それからは只々楽しかった。
個々人もチームも如実に成長し、社会人チーム相手にも勝利を収め、予選ブロックもプレーオフも快勝した。
そしてついに、全日決勝。
この日に向けて準備してきた全てに、何の憂いもない。
だからこそ、最後に感謝を伝えたい。
頼りないリーダーをからかいながらも支えてくれた同期。
どんな時も向上心に溢れる後輩達。
仕事が忙しくても家が遠くても熱心に指導してくださる奥さん、秋山さん、憲二さん。
無茶な要求にも柔軟に対応してくれるマネージャー陣。
毎日のように画面越しで遊んでくれる先輩方。
練習環境が悪くても、チーム編成に納得がいかなくても、毎日一生懸命なCチーム。
あげればきりがないけれど、その全ての存在が、自分の胸を熱くさせた。
もし誰か一人でも欠けていたらきっとここまでたどり着かなかったと思う。本当にありがとう。
こんな事を綴っていたら今度は目頭が熱くなってきた。
この「熱」だけは忘れずにとっておこう。明日の紺碧まで。
WAVE
DF (#6) 大野木貴裕