まず初めに、この「巧より強たれ」を書くに当たり、要望の声掛けをしてくれた平野組の4年生たちと快諾してくれた広報班のみんなに感謝を申し上げたい。
私のコーチとしての活動はまだまだ続くが、来年は早稲田男子の新人コーチ以外にも新しい挑戦をすることを決め、今年を一つの区切りとして何かを残したいと考えていた中でちょうど声掛けをしていただいたので、このブログを書かせていただくことにした。
早稲田の現役学生以外にも、日頃お世話になっている親御さん方や他大学の学生も読んでくださっているかと思うので、まずは簡単に自己紹介を。
初めまして、早稲田大学2016年卒の小菅英祐と申します。
2015年の4年次に学生コーチとして、2018年から社会人コーチとして1年生チームの指導に当たっています。
これから、普段あまり話さない私自身の話と、早稲田の部員のみんなに対する想い、そして最後に少し新人戦に向けた意気込みを書いていきたいと思う。
4年生からは3万字は書いてくださいなどと言われているが、そこまでは長くはならないと思うので最後まで読んでいただけたら幸いです。
平野組が大好きだ。
学生コーチ時代の教え子でもある後藤組と同じほどに。
1,2,3年生ももちろん大好きだが、社会人コーチになって初めて受け持った代というのはやはり思い入れが特に深い。
それだけでなく、平野組のみんなが醸し出す空気感が特に好きだ。
大学生にありがちなウェイウェイしてる感じがほとんどなく、かといって重苦しい雰囲気も全くなく、全員が明るく面白い雰囲気をまとっている。
一言で言うなら、無邪気だ。
そんな平野組の雰囲気がどこか私自身の雰囲気と近いものを感じているし、一緒にいてすごく心地がいい。
ここまで言うと逆にラクロッサーとして弱々しく聞こえてしまうが、そんなことは全くない。
新人戦では、ウィンターでは惜しくも準優勝だったものの、サマーとあすなろを制覇し、2度も胴上げをしてくれた。
2,3年生になっても、全員が各チームの主戦力となって大いに活躍してくれた。
本当に自慢の教え子だ。
そして、これはまだ誰にも話をしたことはないが、私の人生を救ってくれたのも平野組のみんなだった。
もう少し正確に言うと、当時の学生コーチの太田、小柳、そして社会人コーチを務めていた後輩の小瀬敦也の3人も含めて、だ。
私は2018年のシーズン初め、当時所属していた社会人クラブチームを退団した後、何の目標も生きがいもなく怠惰な生活を送っていた。
仕事とその勉強をし、たまに気分転換で一人旅に出かけるくらいで仕事と会社のために生きていたといっても過言ではない。
そんな折、学生コーチ時代の教え子である太田と小柳が4年生となり学生コーチに就任したと聞き、3人でご飯を食べに行く機会があった。
そしてそこで、1年生の練習に来てもらえないかと2人から誘ってもらった。
その日を境に、モノクロだった日々が次第に色づいて行くことになる。
初めて練習に顔を出したのが、たしか5月のGWが終わった後ぐらいだ。
個人的にはワクワクした気持ちもありながらも同時に、いきなり来た謎のOBを不審に思わないだろうかという不安もあった。
しかしそんなことは全くなく、むしろその逆。
私が話していても、目を輝かせながら熱心に耳を傾けてくれた。
そんなみんなの力になりたい、そして1年生コーチの3人を支えてあげたいと心から思った。
その後2回、3回と練習に参加し、最終的に正式にコーチに就任することになる。
それからの日々は幸せに満ち溢れていた。
本当に平野組のみんなと太田、小柳、敦也に人生を救われたといっても過言ではない。
人生は辛いことが9割、楽しいことが1割とたまに聞くが、その真逆というかむしろ辛いことがほとんど思い出せない。
感謝してもしきれない。
そんな日々を共に過ごした平野組のみんなとの新人戦を終え、2年生、3年生と成長していく姿を間近で見れたことも幸せだった。
実力はさることながら、一人ひとりが主体性を持ち、チームに対する自身の役割を全うする責任感もある。
そんなみんなが4年生になったら、どんなチームになり、どんな結果を残すのだろうかと楽しみで仕方がなかった。
しかし、そう上手くいかないのが現実という世界だ。
忘れもしない開幕戦の武蔵戦。
最後まで1点を争う拮抗した試合で、残り約20秒で勝ち越されそのまま予選敗退が決まってしまった。
武蔵の完成度が高かったのはもちろん、個の力も強かった。
この結果に対し、なんやかんや言ってくるOBは残念ながら存在する。
もちろん早稲田を創り上げてくれたことや日頃支えてくださっていることに対する感謝は忘れてはならないが、心ない言葉に耳を貸す必要は全くない。
しかし逆に、君たちの頑張りを理解し本当の意味で寄り添ってくれる人たちもいる。
そういった人たちをこれからの人生で大切にしていってほしい。
卒業してからも間違いなく力になってくれるはずだから。
よく「結果が全てだ」と聞くが、勝負の世界に身を置いている以上これは間違ってはいないと思う。
そのチームを何も知らない人が評価する時、勝負の結果を見て評価するのは当然のことだ。
しかし、その結果を追い求めた過程や過ごした日々、手に入れたものは「勝負の結果」と同じくらい、むしろそれ以上に大切なものだと個人的には考えている。
みんなには、それらを忘れず大切にし、これからの長い人生の糧としていってほしい。
そしてこれは平野組のみんなだけでなく、このブログを読んでくれているであろう他大学の四年生や既卒の方々にも伝えたいことだが、この素晴らしい大学生活や出会いをもたらしてくれたラクロスというスポーツに、ぜひこれからも関わっていってほしいと願っている。
チャンピオンズリーグでも、ファンリーグでも、草ラクロスチームでもいい。
選手、サポートスタッフはもちろんのこと、審判を専門に活動してみたり、事業として関わっていくのでもいい。
どこかのコーチをしたり、練習に顔を出したり、試合の応援に行くだけでも全然いい。
間違いなく君たちの人生を鮮やかにする一つのピースになると自信を持って言えるし、そんな人たちが増えていくことで日本ラクロスが更に裾野を広げ、より高いレベルで世界と戦っていけることに繋がるとも思う。
君たちが輝く姿をまた見てみたいです。
平野組のみんなには伝えたいことはもっとあるが、長くなってしまうのでここら辺で。
最高の日々をありがとう。
一生愛しているよ。
2,3年生にもこの場を借りて伝えたいことがある。
まずは3年生のみんなへ。
これまでみんなには「人間的に未熟だ」「ラクロス以外のオフザピッチの行動が疎かになっている」などと長いこと言い続けてきた。
1,2年生の頃だけでなく、3年生となった今シーズンの初め、特に新歓期にも強く言ったと思う。
けれど、今の君たちならもう大丈夫だと自信を持って言える。
上手くいかないことや納得いってないこと、不安に思っていることなど、君たちの中で思っていることは多々あると思う。
それでも、君たち自身で気付いているかは分からないけれど、あの頃に比べて本当に大きく成長したし、今も成長し続けている。
1年後、素晴らしいチームを創り上げている姿がこの目にはっきりと映っているので、自信を持って恐れずこのまま突き進んでいってほしい。
君たちが一年生だった時、実は「このチームが勝てなかったらコーチの俺の責任になる」と周りの人に話していた。
それくらい素晴らしいポテンシャルを持ったメンバーが揃っている。
ラクロス面においては言うことが全くないので、本当に期待しているし楽しみにしています。
そして、2年生へ。
今年の新人戦で敗退が決まったあの時の大宮けんぽで伝えられなかったことを伝えさせてもらおうと思う。
あの時、「コーチ」として伝えるべきことは伝えたが、口にできなかった「小菅英祐」としての個人的な想いを今伝えたい。
たくさんの愛をありがとう。
贈り物や、厚い寄せ書きの冊子をくれたのはもちろん、一緒に過ごしていて本当に必要としてくれているんだなと感じる瞬間がとても多かったです。
私とのツーショット写真をねだってきてくれる子も多かったのも嬉しかった。
そして、コロナ真っただ中の大変な時期にこのラクロス部を選んでくれて、ここまで共に歩んできてくれてありがとう。
そんな君たちと一緒に臨んだ最初で最後の新人戦は、悔しさや悲しさはあったけれど、私の中では「幸せだった」と感じることの方が今は多いです。
叶うのであれば、もう一度君たちと一緒に戦いたいと思っていたりもする。
試合は選手、スタッフ、コーチの共同作業で勝ちに行くものだと考えているので、君たちを勝たせてあげられなくてごめんとは言わないけれど、予選敗退して上級生やOBから何かと言われる代にしてしまったことは本当に申し訳なく思う。
君たちが上級生から非難されるのを見たり、君たちを見たこともないOBから文句を言われたりすると心が傷む。
けれども、少なくとも私は、君たちが未来の早稲田を背負うのに相応しいだけの実力を真に備えていると断言できる。
自信を持っていい。
胸を張って前へ突き進んでほしい。
実力で見返してやろう。
ここまで学年ごとに伝えてきたが、全体に、特に新チームを担うみんなに伝えたいことがある。
自分が名言を言いたいタイプの人間なので、誰かの名言を引用するのはあまり好みではないのだが、今回はある人物の言葉を借りたいと思う。
私の同期で、2015年に主将を務めた畑田峻希が「巧より強たれ」に書いていた言葉だ。
一度は読んでもらったと思うが、今一度、心に留めておいてほしい。
『チームっていうのは個の集まりで、当然一人ひとりには役割がある。
チームが強くなるために必要なことは「一人ひとりが自分がどんな役割を担えばチームが一番強くなるかを知る」
俺はそう思っている。そして
「それを遂行するための努力を続けること」
だと思っている。
どんな役割でもそれがチームに+になればそれは戦力。
これが出来る人が多い集団は、絶対的に強い。』
もちろん1個人の意見なので、違うと思う人もいるかもしれない。
けれど私は間違いなくチームにとって必要な考え方だと思うし、何ならこの考え方を軸に据えてこの4年間コーチ活動を続けてきた。
今のみんなはどうだろうか。
自分だけがとにかく上手くなりたい、上のチームで活躍できればそれでいい、など考えている人がもしかしたらいるかもしれない。
人数が多く競争が激しい分そうなるのは当たり前のことだと思うし、個の向上を考えた場合はその考え方は必要だとも思う。
しかし、それだけで我々が目標としているところに本当に到達出来るだろうか。
私はそうは思わない。
組織に属する一人ひとりが、組織が目標を達成するために何が必要かを考え、それに対する自身の役割を考え、そしてその役割を全力で全うする。
個の向上に加えて、全員がこのような視点も持ち合わせなければ、組織として上を目指すことは難しいだろう。
今一度、各自考えてみてほしい。
長くなってしまったが、最後に明日のウィンター決勝トーナメントに向けた意気込みを述べさせてもらい、締めたいと思う。
今年は本当に色々なことがあった。
特にラクロス以外の、組織運営面でだいぶ時間と体力を削られた。
コロナ対策、東伏見以外での自主練禁止、度重なる活動自粛に追われた挙げ句、サマー中止、そしてウィンターに向けた練習試合では本番1週間前まで全然思うように行かない試合が続いた。
この苦しすぎる日々を乗り越えることが出来たのは、学生コーチの真斗とのぶ、そして2年間共に活動してくれた1年生渉外担当の明日香のおかげだ。
改めて、3人に感謝を伝えたい。
真斗へ。
1年生の頃は練習に付いていくので一杯一杯で必死だった時が多かったけど、そんな君はもうどこにもいないです。
学年が上がるごとに主体的に考えられるようになり、プレーの幅もどんどん増えて成長していく真斗を見るのがとても楽しかったし、学生コーチになったと報告を受けた時は少し寂しさはあったけれど、真斗なら安心して任せられると思いました。
それから本当に頼り甲斐のある存在に成長してくれたし、今ではこちらが勉強させられる瞬間が多いです。
ラクロスの知識はもちろんのこと、指導の仕方やミーティングの進め方、1年生とのコミュニケーションの取り方などのスキルが抜群なので、改めて考えると本当に学生コーチに適任だったなと思います。
4年間ありがとう。
明日は真斗OFを爆発させて、俺らの4年間に華を添えよう。
のぶへ。
2年前の理科大でのあすなろ練習試合で負けた後、俺に喧嘩を売ってきたのがつい昨日のことのようです。
そんなこともあったし、1年の頃は挨拶が出来ないとか不貞腐れることが多いとか太田から相談を受けたこともあったので、正直なところ初めの頃は不安な気持ちもありました。
けれど、そんな不安は日を追うごとに払拭されていき、今ではもう真斗と同じく頼りがいのある、頼りになりすぎるほどの存在に成長してくれました。
たまに突拍子のないことを言い出すけれど、よくよく考えてみれば的を射ている、みたいな瞬間が多く、俺にとっても学ばせてもらうことが多かったです。
周りからの視線や圧みたいなものを感じることが多々あったかもしれないけれど、終わり良ければ総て良しです。
最後の最後まで、頼りにしているよ。
明日香へ。
2年間共に歩んでくれてありがとう。
1年生チームがここまで辿り着けたのは間違いなく明日香の素晴らしい働きがあってこそだし、感謝してもしきれないぐらいです。
主務の仕事で忙しい中でも沢山の仕事をお願いしたのにも関わらず、嫌な顔一つせずいつも最大限の努力を尽くしてくれたね。
明日はその恩を返せるように、今度はこちらが最大限の努力を尽くすので、どうか最後まで見届けてください。
最後に、1年生へ。
我々は多くの人に支えられ、今があることを忘れてはならない。
学生コーチの真斗とのぶ、1年生渉外担当の明日香。
引退した後も何度も練習に来て指導してくれた4年生。
組織基盤を作り練習環境を整えてくださる嶋田監督や奥HCを初めとしたコーチ陣。
資金面で支えてくださっている稲門会の方々。
そして、いつもそばで支えてくれている家族や友人。
明日はこの人たちに、恩を返せるようなプレーをしよう。
私の使命は未来の早稲田を担う人材を育て上げることであり、新人戦で優勝させることではない。
しかし私を、私たち1年チームを支えてくれている多くの人々が、優勝を望んでいると言ってくれている。
その人たちに、結果で恩返しがしたい。
だから私は心から勝ちたいと思っている。
明日は学生コーチと共に1年生チームとして挑む最後の舞台。
今まで積み上げてきたものを全て出し切り、真剣勝負を楽しみ、そして勝って笑って、紺碧の空を響かせてこのチームの最後としよう。
関わってくださった全ての方々に、愛と感謝とリスペクトを。
GRIT
AC 小菅 英祐