試合の前には必ず誰かが口にするこの言葉。
「巧より強たれ」
早稲田ラクロスを象徴する言葉だが、「強たれ」とはどのような強さを持つ人のことを指すのだろうか。
その「強さ」とは明確な定義がないからこそ、4年間の物語と共に形成されるその人なりの意味があると思う。
A、B、C、α、β、留学、全てのチームを経験して辿り着いた自分なりの答えがこれだ。
「個人の状態にかかわらず、チームの勝利に繋がる行動を選び続けられる人」
2月に井原組が始動してから、役職についていない4年生として果たすべき使命は何なのかを考えさせられることが多かった。
1年生の時からオフェンスの選手として評価してもらうには、点を決めることのできる選手になれとずっと言われてきた。それは今も変わらない。
今年の前半戦は冬オフ期間に宗次とショットを打ったおかげで、ずっと課題だった決め切りが改善され、武蔵大学との練習試合でチーム初ゴール、六大戦でも最初のゴールを決めた。
これまでAチームで一度もプレーしたことがなかった自分にとって、Aの試合で点を決めることができるという事実が確固たる自信に繋がっていった。
そこからATとして試合に出場し、流れを引き寄せる得点でチームの勝利に貢献することこそが「強さ」であり、全うするべき使命だと思っていた。
しかし、早慶戦はそれだけがチームの勝利に貢献できる「強さ」ではないことを教えてくれた。
早慶戦直前の最強決定戦準々決勝もスタメンとして出場し、得点でチームの勝利に貢献した実感があった。
そこから、早慶戦でもスタメンに名を連ね、日吉の大舞台で名前が呼ばれることを想像しワクワクしていた。
そんな期待を心に秘めながら迎えた早慶戦前合宿。
シチュエーション別6on6の負け状況のメンバーに自分の名前はなかった。
チームが負けている状況でグラウンドに立って、流れを引き寄せるゴールを決めるチャンスすらないことに深く心を抉られた。
ゴールを決めることで築き上げてきた自信が一気に崩れていった。
そこからの練習は一つのミスが心をさらに疲弊させ、ボールに触れないまま6on6の一本が終わればいいと思ったこともあった。
そんな状態でも早慶戦のためにシーズン前半戦を戦ってきたからこそ、このチャンスを逃すわけにはいかないと必死だった。
迎えた早慶戦当日。
スタメン紹介で名前を呼ばれるみんなを見て、あれほどまでに悔しさを感じたことは今までの人生でなかった。
スタメンで出場してきた自信があっただけに、心に来るものがあった。
それでも「今、ここ、自分」
これまでも途中から試合に出て、得点に絡んできたからどのような場面でもどこかで必ず出番が回ってくると信じていた。
クオーター間、タイムアウトで集まるたびに名前が呼ばれることを期待した。
それでも出番は2Q終わりにクロスチェックを回避するために伊織と変わった30秒だけ。
気がついたら4Q。
4Qで負け状況。つまり、それは出番がないことを意味した。
込み上げる悔しさにボックスで目頭が熱くなった。
バレないようにキンキンに冷えた水で何度も目を濡らした。
得点を決めてチームを勝利に導くことはおろか、試合にすら出られない無力感から自分の存在価値を疑った。
それでも、この人生で一番悔しい経験が自分の中での「強さの定義」を変えてくれた。
フェイスオフのホイッスルから試合終了の瞬間まで、早稲田の勝利のために行動できていたのか。
早慶戦でフィールドに立っていない自分は何をしていたのか。
ボックスからチームメイトを鼓舞する声掛けもできていなかった。
タイムアウトの時にオフェンスメンバーをポジティブな声掛けで迎えることもできていなかった。
怪我人が出ることを想定して、いつでも出られるように体を動かすこともできていなかった。
大声で叫ぶ仲間の横で、自分は泣くことしかできていなかった。
あの日の行動はチームのためのものではなかった。
全ての行動が独りよがりだった。
だからこそ
「巧より強たれ」とは
「どのような状態でも、仲間やチームのために行動すること」
4年間で積み上げてきたものを発揮する試合の時間は60分しかない。
その限られた時間の中で、
自分がどれだけ苦しくても、
ライド中にファールケアの声を出す
ミスで苛立つ選手にポジティブな声を掛ける
相手との激しい接触があった仲間を宥める
ボックスからクオーター残り時間を全力で叫ぶ
チェイスを取ってオフェンス機会を一回増やす
流れを引き寄せるゴールを決める
一つ一つの行動を早稲田の勝利のために積み重ねる。
序列、役職、立場、学年、チームは関係ない。
早稲田を代表して試合に関わる以上は、仲間のために行動し続ける。
そして勝利に貢献し、早稲田の伝統を築いていく。
4年間で辿り着いた、この「強さ」を日本一の瞬間まで体現し続けたい。
長くなりましたが、最後にお世話になった方々に感謝を伝えさせてください。
家族へ
ここまで不自由なく部活動に取り組ませてくださり、ありがとうございます。常に自分の挑戦を後押ししてくれたことに感謝しています。朝4時に起きてくれたり、怪我を心配してくれたり、試合でうまくいかなくて不機嫌に帰ってきた時はそっとしておいてくれたりとたくさん気を遣わせてしまったし、たくさんの迷惑をかけたと思います。みんなの支えがなければここまでくることはできなかったです。全力でラクロスをする姿で少しでも恩返しできればと思います。ラクロスできるのも残りわずかですが、最後まで応援よろしくお願いします!(親戚のみんなも配信とかで応援してくれてありがとう!)
同期へ
踏みとどまった時に、次の一歩を踏み出すことができたのはみんながいたからです。
ロンドンバッツ井原
虹色の主人公伊織
ちび仲間みと
何やってもおもろいれお
ルーツ不明のそち
True Love富田
ずーっと細いひだ
生きていて良かった永治
個人的になっちゃう藤
かまちょすぎる長谷川兄弟
天才編み氏宗次
いやガチかぁの樹生さん
中島
どんなに辛い朝でも、東伏見に着いて同期と話せば自然と笑顔になって、1日1日を乗り越えてくることができました。大学生活をラクロスに捧げた仲間だからこそ、分かち合えた喜びや苦悩があったと思います。井原組のみんなとここまで共に成長することができて本当に楽しかったです。最後までよろしく!
スタッフへ
彩乃、凛、明莉、聖奈、響己、陸を中心に、常に選手たちがベストを尽くせるように様々な方面からサポートしてくれてありがとう。留学先でスタッフがいないチームでラクロスをやってきたからこそ、ミスをしても新しいボールが置いてあったり、試合中にショットの成功率がわかったり、座っていたら足首にテーピングを巻いてもらえることがどれほど恵まれた環境であるかを日々痛感しています。早稲田の日本一には欠かせない存在なので、最後まで一緒に戦ってください!
後輩へ
我慢しないといけないことも多かったかもしれないけど、ここまでついてきてくれてありがとう。後輩のやることにはなっているけど、ビデオあげるのとかグラメとかいつも助かっています。井原組の日本一には必ず後輩たちの力が必要なので最後までついてきてください。
これまで指導してくださったコーチの方々へ
学生主体の組織でありながらもコーチの方々の指導があるからこそ、伝統ある強い早稲田が成り立っていると思います。忙しい中、土日の貴重な時間を私たちの指導に充ててくださり、ありがとうございます。選手としてフィールドで全力を尽くして戦いますので、ボックスからの共闘、よろしくお願いします。
伊達へ
この4年間を駆け抜けてくることができたのはあなたがいたからです。目標を見失った時に、どんな立場でも活躍する姿にたくさんの刺激をもらったし、ラクロスを頑張り続ける原動力になりました。どんな悩みにも優しく耳を傾けて、常にポジティブな声掛けをしてくれたおかげで、何度も自分を進むべき道に引き戻してくれたと思っています。感謝してもしきれないほど救われてきました。本当にありがとう、これからもよろしく!
井原組『最終章』開幕
会場は獨協大学グラウンドで完全にアウェーの環境、苦しい時間は絶対にやってくる。
それでも早稲田には最高の応援がある。明日も熱い声援よろしくお願いします。
想定外も想定内。やってきたことをやるだけ。
全員で勝って笑おう
PULSE
AT #16 進藤洸翔

