「日本一」
かっこいいなって素直に思った。
そういえば、今までの人生で誇れるものなんか自分には一つもなかった。
小さい頃から引っ越しの多かった俺は周りの目ばっかり気にして、ふざけてるだけ。
でも友達はすぐにいなくなるし、同じことを続けることができなかったから中途半端なことだらけ。
唯一、スポーツをやっていたのも友達を作るのが一番簡単だったから。
弱い人間だった。
高校で初めて没頭できたと思ったラグビー。
ようやくお別れの心配もせずに、信頼できる仲間に囲まれた。
でも結果は出なかった。
ただ悔しかった。
努力しても強豪校には勝てなかったし、
最後の引退試合も負けて、何も変わってない自分の弱さを痛感した。
勝ちたかった。
「日本一」になれるかもしれないと思って挑戦したラクロス。
一つのことを最後までやり遂げた最高の証。
これまでの中途半端で弱い自分はもう嫌だった。
ラグビーをやってたから少しはついているだろうなと勝手に思っていた。
そして入部してすぐにチーム編成が発表された。
下から二番目。
やっぱりスポーツに向いてない。
弱い。
結局楽しんでるだけの方がいいじゃんって思った。
でも勝ちたかった。
これまで何かを成し遂げたことなんてなかった。
胸を張って自慢できることなんか一つもなかった。
十八年も生きてて本当に恥ずかしかった。
臆病で弱い自分なのは気づいていた。
強くなりたかった。
もう逃げてばっかりの人生は嫌だった。
入部してからは同期に食らいつく毎日。
順位も少しずつ上がっていって、ようやく同期とか先輩にも認められるようになった。
でも一年生の時はβ止まり。
αが優勝して俺は勝てなかった。
二年の時は幸運にもBチームに入れてもらった。
でも俺が試合に出る度に失点。
先輩にも同期にも迷惑ばっかりかけてた。
三年の時は留学をしてラクロスからも離れてしまった。
俺がいなくなったBチームが優勝しているのを見て本当に悔しかった。
俺がいない方が強かったんじゃん。
そして留学から帰ってきたら三年なのに一番下からのスタート。
結局俺の人生はこんなもんかと思った。
中途半端なまま何も変わってない、弱い人間。
勝ちたい。
あれから毎日、目の前の敵に勝つことだけ集中した。
不器用で、下手くそで、何も取り柄のなかった俺だけど、
ただ変わりたかった。
相手を倒せば喜んでくれる。
ミスしても励ましてくれる同期。
一緒に勝とうって言ってくれる仲間。
幸せだった。
今までこんなにも仲間に恵まれたことがあっただろうか。
そして今は幸運にもまたBチームで試合にも出させてもらっている。
明日には仲間との大事な試合も控えている。
まだ俺は闘っている。
何も誇れるものがなかった。
ずっと弱かった。
中途半端で負けるだけの人生。
勝ちたい。
四年目にして、やっと「日本一」への道を歩み始めることができた。
もう負けるのは嫌だ。
もう弱いだけの自分じゃないことを証明したい。
勝つ。
勝って、これまでの俺の人生は間違っていなかったと証明したい。
勝って、俺は変わったんだと言いたい。
勝って、みんなと「日本一」になりたい。
勝負の舞台は整った。
先輩、同期、後輩、スタッフのみんなにはこれまで本当にお世話になりました。
これまで何も誇れることがなかった俺の人生がラクロス部に入って変わったと胸を張って言えます。
だけど、まだ終わらない。
勝つ。
俺は最後まで試合で戦い続ける。
本気で、
全身全霊で
死ぬ気で、
目の前の相手に勝ちに行く。
勝つ。
けーき、いつもチームをまとめてくれてありがとう。いつも優しく見守ってくれてありがとう。
大智、いつも点決めてる姿最高にかっこいいぞ。お前の背中で後輩はちゃんと学んでるよ。
星野、いつも冷静で、的確なプレーして、たまに怒ってもくれる。ミスしても励ましてくれてありがとう。
加藤、いつもイジってばっかりでごめんな。
お前のラクロスに対する熱い想いは十分知ってるよ。これからも頑張ろう。
やまきー、いつも俺のこと褒めてくれてすげえ嬉しいよ。やまきーが一番強いけどな。
ようたくん、いつもDFをまとめてくれてありがとう。いつも安心して暴れることができます。
能勢、高校から付き合いなげぇな。最後まで一緒に青春できると思うと本当に嬉しいわ。
宇野、いつもDFミスるの最後にゴール守ってくれてありがとう。これからも助けてください。
ダイスケ、いつもキレキレのダッジかっこいいぞ。抜かれないように俺も頑張るわ。
みんなこんな俺を認めてくれて本当にありがとう。
試合でこれまでの想いを体現するから見ててね。
強い早稲田を証明しよう。
勝って、生まれ変わろう。
日本一になろう。
勝つ。
CHANGE
#12 仁尾駿介