自分は強い人間じゃない。
コツコツ努力することも苦手だ。
どちらかといえば、できるだけ最小限の努力で結果を出したいとさえ考える人間だ。
ラクロスは(他の競技もそうかもしれないが)壁あてやウェイトトレーニング、
動画での研究など、
日々の積み重ねがモノを言う。
中小路渉を見ればわかるだろう。
彼はまさしく「プロ」ラクロッサーだ。
こんなことを言うと彼は怒るかもしれないが、あそこまで努力を継続できるのは才能だと思う。
そんな才能を持ち合わせない自分だけれど、なんとかここまで「自分なりに」頑張ってこられた。
負けず嫌いだったり早稲田としての使命感だったりもあるが、もっと強い、二つの原動力があったからだと思う。
一つ目の原動力は、試合で勝ったときの感動だ。
ラクロスは、自分が出会った中では、感情を爆発的に表現できる一番のスポーツだ。
点が入った時にはみんなで飛び跳ねるように喜び、プレーが上手くいかないときは悔しくてクロスを地面にたたきつけることもある。
特に、大事な試合の勝利の瞬間は、喜びと感動と興奮で胸が溢れかえる。
クロスやヘルメットを放り投げ、みんなのところに駆け寄り抱きしめ合う。
この瞬間がたまらなく好きだ。
生きている中で一番幸せを感じる瞬間だ。
幸いなことに、早稲田大学ラクロス部にいるとこういう瞬間に多く立ち会える。
下級生のときはAチームの勝利が、Aチームにいる今は自分たちの勝利はもちろんBC一年生の勝利が自分を奮い立たせてくれる。
この喜びを味わうためなら吐くほどにつらいフィジカルにも耐えられた。
二つ目は、仲間の存在だ。
月並みな表現だが、自分一人ではここまでやってこられなかった。
チームへの不満を愚痴りながらもいつかはおれたちが、と共に酒を飲んだBC時代の同期。
練習後に毎日のように半ば無理やりウェイトに誘ってくれる同期。
問題児の自分でも見捨てず最後まで期待してくれた俊汰としゅーと。
どんどん成長して危機感を与えてくれるだけでなく、学年で一人になってしまった自分の心のよりどころになってくれたFOの後輩たち。
卒業した今もたまに練習にきて自分はまだまだと思わせてくれる偉大な先輩。
他大のFOの仲間たち。
どんなときでも誰かが刺激をくれる。
だから頑張れた。
これらが弱い自分を突き動かしてきた原動力だ。
ここでもう一度、後輩たちにはラクロスを頑張る原動力や目的が何なのかを考えてみてほしい。
それが曖昧なままただがむしゃらに頑張るよりも、具体的な自分の言葉で心の中に持っておいたほうがつらいときに励みになるからだ。
そのひとりひとりの原動力や目的の延長線が「日本一」に集まっているのならば、最強のチームになれるはずだ。
まだ見たことのない「日本一」の景色は素晴らしいものに違いない。
どんなつらいこともやってきてよかったと思えるくらいには素晴らしいものだと期待している。
それを見るまでは負けるわけにはいかない。
明日はFINAL4中央戦。
こっからは負けたら引退だけれど、やることは変わらない。
目の前の一戦を死ぬ気で戦う。
勝ったときの、何にも代えがたいほどの喜びと感動と興奮を味わいたいから死ぬ気で戦う。
弱い自分を引っ張ってくれた仲間のために死ぬ気で戦う。おれが死ぬ気で戦えば、普段クールぶっている中島だって熱い気持ちを見せてくれるはずだから。
本気のおれたちなら負けっこない。やってやろう。
WAVE
FO (#3) 鈴木雄大