学生コーチなんてやりたくなかった。
春合宿で行われたミーティング。投票の結果、みんなから推薦もあり学生コーチをやる事にしたが納得なんかしていなかった。
またグラウンドに立つために八か月もリハビリをしたのに。
試合に出るために何百本もシュートを受けたのに。
あと一枚抜けばAチームだったのに。
早稲田の守護神として活躍したかったのに。
「日本一」になりたくてラクロス部に入部したのに。
本当に悔しかった。
何度も家で一人で泣いた。
もうプレー面で早稲田の「日本一」に貢献する事ができないなんて受け入れる事ができなかった。
正直、あの頃のオレはラクロスに対するモチベーションはもうなくなっていた。
そんな中、いよいよ四月になり一年生が練習を見学に来るようになった。
最初はコミュ障のオレは三歳も四歳も歳の離れた一年生にどう接して良いのかわからずに戸惑う事も多かった。
この中の何人が入部してくれるのだろうか。
ラクロスの魅力は伝わっているのだろうか。
不安な事ばかりだった。
しかし、彼らは他にも楽しい事があるだろうにも関わらず一生懸命にラクロスに向き合おうとしてくれた。
なんでもないパスキャやスクープの練習を本当に楽しそうにやってくれた。
彼らが楽しそうに練習する姿を見ていてオレはやっと気づいた。
ああ、オレはラクロスが好きなんだ。
一年生の頃は、ラクロスが本当に好きで毎日自主練をしていた。
そんな自分の過去の姿を彼らが思い出させてくれた。
そして、オレは思った。
あと一年間好きな事ができる。
こんなに一生懸命なやつらと一緒に「日本一」を目指せる。と。
学生コーチをやって気づいた事がある。
「日本一」への貢献の仕方は色々あるという事だ。
博や大そして光太郎、大雅、正幸のように幹部としてチームを引っ張るのもよし。
大次郎や皇希そして髭本のようにAチームで試合に出て活躍するのもよし。
川本や吉村そして薫平、新美のようにBチームを強くしてAチームの脅威とするのもよし。
滉大や渉のようにモチベーションが下がりがちなCチームを纏め上げるのもよし。
ももかや由夏のようにマネージャーとしてみんなから見えないところでチームを支えるのもよし。
新斗や美月のようにチーム全体を強くするためにトレーニング面、リハビリ面でサポートするのもよし。
オレや矢治のように学生コーチとして未来の早稲田を強くするのもよし。
本当に「日本一」には色々な貢献の方法があると思う。
そして、「日本一」にこそなれなかったけれどもオレらの代は本当に全員が色々な方法で「日本一」に貢献しようとした。
One for all, All for one.を一番体現した代だと本気で思う。
本当に自慢の同期だ。
みんながみんなの方法で「日本一」に貢献しようとしているのを知っていたからオレは頑張れた。
本当にありがとう。
そして、オレは心の底から今こう思っている。
学生コーチをやれて良かった。
こう思えるようになったのは42人の一年生おまえらのおかげだ。
練習に行きたくないと思う日もあったけれども、グラウンドに行けばいつもラクロスに一生懸命なおまえらがいたから頑張れた。
ありがとう。
口下手で不器用だったけど、オレなりに一生懸命やったつもりだ。
夏合宿では1on1を744本もやったり、最終日はビデオミーティングを深夜一時までやったりオレのわがままに付き合ってくれて本当にありがとう。
そして、最後にもう一度オレのわがままを聞いてくれ。
明日のウィンターステージではおまえらのOne for all, All for one.を見せて欲しい。
シュートを決めるでもいい。
グラボに寄るでもいい。
1on1で圧倒するでもいい。
ボックスから声を張り上げるでもいい。
チームの勝利に貢献する事ならなんでもいい。
おまえら42人のそれぞれのOne for all, All for one.を見せて欲しい。
それさえできればオレらは絶対に優勝できる。
オレらはサマーステージで負けてから誰よりも練習してきた。
もう恐れる事は何もない。
明日のウィンターステージ、絶対に優勝して青木組は「日本一」になる代だという事を証明しよう。
滾れ。
学生コーチ 小瀬敦也