4-11。
無様だった。
飛んでくるシュートは為す術もなく自分をすり抜けネットを揺らす。
「お前のせいじゃない。」
そう言われるのが何よりもキツかった。
何も出来ずに先輩達を負けさせてしまった去年のFINAL4。
「ゴールキーパーの"英雄"と"役立たず"は紙一重」
あるサッカー選手の言葉。
このポジションは、なんとも分かりやすい世界にある。
大きな舞台であればこそ、それはより顕著に現れる。
そしてあの試合では、自分はまさに"役立たず"でしかなかった。
昔から分かっている。
自分は別に優秀な選手じゃない。
特別な能力や強みがある選手じゃない。
いつも大きい試合になれば嫌というほど痛感する。
「器用貧乏」
自分にぴったりの言葉だと思う。
昔から人に比べて秀でてる事なんてなにもない。
才能や特技もない。
そこそこ人並みにこなせるだけ。
そもそもスポーツに恵まれていない。
GKをやっていた時も、身体能力の無さに苦しんだ。
ラクロスでもそう。
足が速くもないし、ガタイも良くない。
反射神経もよくないし、高度な戦術理解力もない。
Gとしては平凡。
それでも試合に出たくて、勝ちたくて、日本一になりたくて、
自分にしか出来ない事を探してきた。
グラボに寄るとか、パスカットを狙うとか、DFのカバーをするとか、
Gとしてプレーの幅を広げようとチャレンジしてきた。
それが認められて今ここにいる。
こうしてAチームで使ってもらってきた。
本当に恵まれている。
多分他大じゃ使ってもらえてない。
(余計な事するなと言われそうだ。)
だから、試合に出れる感謝を込めて戦う。
こんな自分を応援してくれる、
ゴールマウスを任せてもらえる、
その責任を果たさなければいけない。
自分ならではのプレーで、チームの勝利に貢献する。
この組織にいて自分が出来る事は、それしかない。
カタチは違えど、14年ゴールを守ってきた。
ずっとゴールを背負って戦ってきた。
その全てをぶつけ、戦い抜く。
もうあんな悔しい思いをしない為に。
自分はスーパースターではない。
"英雄"には、なれないかもしれない。
だが、この日本一アツい奴らがいるチームを勝たせる、その一端を担う選手でいよう。
日本一アツい奴らと、日本一の景色を見よう。
このチームで日本一になる。
もう、"役立たず"ではいられない。
スポーツの世界に身を置いてから、ずっと憧れた光景。
その瞬間が見たい。
その感動をみんなと共有したい。
こんな所で立ち止まるわけにはいかない。
目標は、もっと先。
FALCONSを倒すのは、俺達だ。
日本一のチームになるのは、早稲田だ。
CHANGE
G #8
髙杉昂生